モーリーン・ウオルシュ著「メイ・ギブスーガムナッツの母」高沢英子訳2012・9・10
序:ガムナッツの母
-どう言ったらいいか、説明するのはむつかしいことなんだけど、わたしには、わたしが、あの可愛いちっちゃな生きものたちを見つけたのか、それとも、もしかして、ブッシュ・べービーたちのほうがわたしを見つけたのか分からないのよ。
1968年、メイギブスのインタビューより
先住民族のもっていた伝説や伝承に包まれた豊かな土地を植民地としたにもかかわらず、新しい移住者たちは、生まれ故郷の異質の慰さめと独自のファンタスティックな生きものたちへの郷愁を、オーストラリアに持ち込んだ。
一世紀以上もの間というもの、ブリテンの童話に登場するすべての空想の生きものたちーアイルランドの小妖精レプレコン、ウエールズの水の精ケルピー、スコットランドのお手伝い妖精ブラウニ―、そしてイギリスのいたずら妖精ピクシーたち、仙女、悪鬼たちーこれらがオーストラリアの白人の子供のための標準の読み物だったのである。それらには、現実に彼らを取り巻いている野性的な風景とは程遠い色美しく描かれた優しい花々や、毒キノコが点在する牧場、バラの花に囲まれ、豪華な衣装をまとった仙女がたそがれの淡いパステル調の色彩のなかで漂うトンボの翅に包まれて描かれているという風だった。オーストラリアのこどもたちが、彼らがいまおかれている環境が、真のお伽の国ではないと、きめつけたとしても、驚くにはあたらないことだったのである。
スポンサーサイト
コメント
コメントの投稿
トラックバック
http://piccalda.blog51.fc2.com/tb.php/55-f6b317fe