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プロフィール

高沢英子

Author:高沢英子
FC2ブログへようこそ!
 伊賀上野出身
 京都大学文学部フランス文学科卒業

 メイの会(本を読む会)代表。
 元「VIKING]「白描」詩誌「鳥」同人

著書:「アムゼルの啼く街」(1985年 芸立出版) 
「京の路地を歩く」 (2009年 未知谷)
   「審判の森」    (2015年 未知谷)     

共著: 韓日会話教本「金氏一家の日本旅行」(2007年韓国学士院)
 現在メールマガジン「オルタ」にエッセーなど寄稿。

 

東京都 千代田区在住


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『メイ・ギオブス/ガムナッツベイビーの仲間たち】    高沢英子  
            ⑹
さて、トカゲおじさんはそれっきりなかなか追いついてこないので、坊やたちはそのまま歩いて行きました。
そして行く途中で、道端のとある店で、中古のおうちが売りに出されているのを見付けます。じつはそれ、蓑虫のカラなんですが、ふたりはそれぞれ1枚づつ買いました。(※坊やたちはキャップの下にお金をしまっているんです)
暖かくてちょうどいいや。夜は寒いからね。二人はトカゲおじさんが帰ってくるまで、このおうちを木にぶら提げ、中で休まましたが、すぐにぐっすり眠ってしまいました。
ところが、真夜中に、一匹のまだら猫がこの家を見つけ、くんくん嗅ぎながらやってきました。大家族を養っているこの猫は、その日は食べ物をなにも見つけられずにいたので、「カブトムシかな?でも無いよりましさ」とまさに口にくわえようとしたとき、突然怖ろしい物音がしました。
暗闇の中で騒々しい叫び声が聞こえ、まだら猫は逃げ去ってゆき、サングルポットとカッドゥルパイが跳ね起きると、恐ろしいことに2匹の熊が喧嘩して、大きな+唸り声をあげながら戦っているんです。木にぶら下げたおうちで寝ていたユーカリ坊やたちは、熊たちの大きな足で蹴り落され、草の上に転がり落ちました。幸い草はふかふか柔らかく、彼らが入っていた小さなおうちも、彼らをしっかり包んでくれていたので、怪我はなかったんですが、ふたりは怖ろしくてたまらず、その場でじっと静かにしていました。
夜が明けてみると、そこは木の実や花たちのキャンプ場のそばで、花たちや木の実もみんなキャンプ場から出てきて、ゆうべは恐ろしかった、と話し合っています。彼らは口々に言いました。
「でもこれって、いつものことなんだよね。私達はほとんど眠れないんだよ」
けれども、まだその場にいた2匹の熊は機嫌を直し、かれらに仲間入りしています。実はこの熊たちは夫婦だったんですよ。
(このあたり、当時幸せな結婚生活をはじめていたメイが挿入した、ちょっぴりユーモラスなエピソードでもあります)
カッドゥルパイがいいました。
「さあさあ、みんなドレスアップして楽しまないかい。笑っていると災難なんか来っこないよ」
木の実や花たちも、そのアイディアに大喜びし、てんでにおめかしの準備を始めました。 
その晩月が昇ると、彼らは大きな熊さんの前でダンスをしました。
熊の夫婦もとても楽しんで、一晩中大きな声で笑っていました。
ワライカワセミ夫人がこのワイワイ騒ぎを聞きつけて何だろうと見に来ました。彼女もまた仲間入りして一晩中笑い転げ、このブッシュキャンプ場は笑い声でいっぱいになりました。
そしてワライカワセミ夫人は、カッドゥルパイ兄弟を褒めたたえる大宴会を開きましょうよ、と提案します。けれども、それはこの兄弟ふたりにとってちょっと有難迷惑な話でした。だってカッドゥルパイ兄弟は、蛇や死んだ生きものを食べるなんて見たくもなかったんですもの。
丁度その時トカゲおじさんが戻ってきて、それまでの話を聞きました。そして「それなら私はワライカワセミ夫人のために蛇狩りに行ってきましょう。あいつらがどこに沢山いるか知ってますからね」
と申し出ました。かれは義理堅いところがあり、かつて長い旅をした経験も持ってますからね、とにかくまもなく大きな袋いっぱいに蛇を入れて帰ってきました。ディナーパーテイのはじまりです。
お皿に盛られた蛇を大きな嘴に挟みこんで呑み込んでゆくワライカワセミを茫然と眺めるユーカリ坊やたち。トカゲおじさんは一休みしに行ってしまいました。蛇狩りでくたびれたんでしょうね。
やっとパーテイが終わってユーカリ坊や兄弟はまた旅に出発しました。すると道の途中で、一匹の蛇が玄関のドアから這い出してきました。慌てていたらしく、口に何かを咥えています。そして
「ああ!あんたたちの友達のトカゲはどこへ行った?」と叫びました。
「ごめんなさい。ぼくたち知りません」とサングルポット。
「誰があたしの叔母さんや姑さんや3人の従弟たちを殺したんだね?」と彼女はヒイヒイ言いました。
「申し訳ないけど僕は知りません」と答えるサングルポット。
「じゃあ、誰があのひとたちが食べられるのを座って見てたんだい」と彼女は喚きました。
「失礼ですが」とカッドゥルパイが話に割って入りました
「さっきから、あなたが口に咥えているのは何ですか?」
誇り高く邪悪な蛇夫人は
「これはあたしのただのモーニングだわよ!・・・」と鎌首をもたげて昂然と言い放ち、さきほどから口からはみ出している幼虫を飲み込もうとします。
「お気の毒な蛇夫人」とカッドゥルパイは続けました。
「あなたはほかには草くらいしか手に入らないんですか?」
「あたしは鳥も朝ご飯に食べるわよ、毎朝ね」
誇り高く邪悪な蛇夫人は言い返します。
「おお!あんたは鳥を食べる。そして鳥もあんたを食べる」
とカッドゥルパイ。
蛇夫人はかっとなって、怒りで緑色になり、
「あたしの次の食事はトカゲの煮物だわよ」
と昂然と鎌首をもたげて云うと、さっとうちの中(実は穴)に姿を消しました。
サングルポットとカッドルパイはトカゲおじさんに報せなくては、と急いでおじさん探しに出かけます。

オーストラリア大陸原野での自然のきびしい現実。でも、このあたりのリアルなイラストシーンは日本の子供達にはうけないかもしれません。実は私もちよつぴりいやなんですけど・・。 
さいわいトカゲおじさんは無事でした。次回はまたまた子の坊やたちが出会う愉快な蛙たちの住む池の端の村の話と、トカゲおじさんとの再会を紹介します。







                           
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